東京高等裁判所 昭和33年(ネ)528号 判決
一、横浜市港北区南綱島町字別所耕地一八五番田五畝十八歩外畦畔八歩の土地に対しては、耕地整理登記後の字別所耕地一六二番の土地の一部に相当する約九十四坪の部分が仮換地に指定されていたところ、被控訴人はその土地を耕地整理完了後に換地として交付を受ける目的を以て、右一八五番の田を訴外小池駒次より買受けたものであることは、原判決の認定するとおりである。然るところ、当該耕地整理組合は耕地整理完了後昭和十八年四月前記一八五番の田の換地として耕地整理後の新地番一七二番の田五畝二十九歩を交付する旨換地処分をなし、同月十四日付で神奈川県知事がこれを認可の上同月二十日告示し、昭和十九年十月四日従前の土地につきそのように耕地整理登記がなされたことは、当事者間に争がない。一方耕地整理後の地番一六二番の畑一反五畝十二歩は別に被控訴人所有にかかる字別所耕地七七〇番田二畝十一歩外畦畔四歩、同一〇八番田四畝二十九歩外畦畔四歩、同一一〇番田七畝十三歩外畦畔十八歩の三筆の土地に対する換地として交付されたものであることが、成立に争のない乙第八号証の記載に徴し認められる。従つて以上のような換地処分の形式からすれば、従前の土地一八五番の田が本件係争の一七二番の土地と一六二番の土地の一部約九十四坪とに重複して換地されたものでないことは多く言うを俟たない。原判決説示の如く、耕地整理組合の当局者は、組合地として予定されていた本件一七二番の土地に相当する部分を、組合地の買主の名義に移す手段として、便宜一八五番の土地の登記用紙を借りて耕地整理登記をしたに過ぎず、真実一八五番の土地に対する換地として本件土地を交付する意思なくして右換地処分をしたものと認められるけれども、公共組合たる耕地整理組合のなす換地処分は性質上一の行政処分であつて、行政処分については民法心裡留保に関する規定は適用し得ず、外部に表示された行為が仮令行為者の内心的意思と異る場合においても、これがため処分の内容自体に違法を来すのでない以上、行政処分は内心的意思に拘りなく、外部に表示されたところに従つて効力を生ずるものと解すべきであるから、前記換地処分の示すとおり被控訴人は本件一七二番の土地を一八五番の田の換地として取得したものというべきである。
二、原判決理由(三)の挙示する証拠によれば、横浜市綱島第三耕地整理組合は、耕地整理工事の費用を支弁するため、評議員会代議員会等組合機関の決議に基き組合員承諾の下に、整理施行地区内の土地所有者に交付すべき換地の面積を一定の割合によつて減歩し、その減歩によつて生ずる余剰の地積に相当する土地を凡て組合に帰属させ、これを適宜の面積に分ち組合地として地区内の数ケ所に設けることとしたことが認められる。しかし、かくして生ずべき組合地なるものは、換地処分及びその認可告示により整理施行地区内の従前の土地に対応し、減歩して交付される換地が終局的に確定して従前の所有権が消滅する結果始めて組合の所有に属する残余地として確定すべく、それ迄のところ従前の所有権は存続し、組合は単にその土地に対する使用収益の権利を有するにすぎない筋合であるから、前記耕地整理組合が工事施行の途上において組合地を処分する場合でも、それは組合地として指定された土地に対する使用収益権を譲渡すると共に、工事完了の暁に指定区域がそのまま残余地として確定すべきことを条件として所有権を買主に移転することを意味するものというべく、従つて組合地の買主が売買と共に即時所有権を取得するものでないことは明かである。
(二宮 奥野 大沢)